こちら、ヤザキメディカル様のエアーシートが私の関わった製品です。
名付けてエアーシート。主にベビーカー等での赤ちゃんのお尻から背中にかけてのムレを解消するために作られたグッズです。
私が退職してから発売されたものですが、基本設計や機構、金型用最終製品データなどを担当させていただきました。
今までいろいろな試作、開発に関わってきましたが、下請けや派遣等での案件がほとんどでしたので、市場に直接出る自社商品の開発という点でも、メインで担当させていただいたという点でもとても印象深いですね。
この製品の特徴は、「赤ちゃんの背中に風を当てる」のではなく、「新鮮な空気を赤ちゃんのお尻から背中まで通す」ことにあります。この手のアイテムによくある「風を吹き付ける」ものとは違い、赤ちゃんのお尻から背中にかけての湿気を、通り抜けていく風に運んでもらうことによりムレを解消するのがコンセプトとなります。
風は凹部を通ってサイドヘ抜けていくので赤ちゃんに強く当てる必要はなく、通り抜ける風が緩やかに、そして各区靴にムレを解消してくれます。
「風を強くあてる必要はない。風の流れは弱くても、通り抜けていけば十分」「通り抜ける空気の流れが湿気を運んでくれるので、扇風機のように強くあてる必要はない」といいことを他のメンバーに理解してもらうのにはなかなか苦労しました。
やはり、風が強いほうが効果が大きい、と思ってしまいますものね。でも、風が強い赤ちゃんの未熟な体温調節機能を超えた冷却効果を出してしまうことも考えられますので、必要最小限の風で大丈夫な構造や材料の組み合わせをみんなで考えました。
この製品の設計上のポイントは以下の通りです。
①薄く、コンパクトであること
②ベビーシートのリクライニングや折りたたみに対応できること
③十分な強度や安全性があること
④実用上問題のない使用時間が得られること
①を実現するために、いわゆるブロアーファンを使用しています。必要な風量や消費電力、コンパクトさを両立するため、ファンの大きさや薄さにはこだわって選定しています。
また、電池ボックスを内蔵せず、電源はモバイルバッテリーで対応しています。
②を実現するために、折りたたみのヒンジ機構と凹型の風の流路の形状には工夫をしています。折り曲げの角度が水平から75度までは空気の漏れを極力減らし、それ以上の角度では回転軸の位置がズレることにより、90度を大きく超え、およそ135度の曲げ角度を実現しています。
この特殊ヒンジが苦労のしどころで、ちゃんと元通りの位置にもどることを、発案、設計担当の私以外の誰も信じてくれませんでした(涙)。試作でちゃんと動作するまでは、みんなの視線が冷たかった木がします。なお、このヒンジは簡単に取り外しが可能になっています。
③を実現するために、自動車部品の試作に関わっていた経験を生かし、補強や位置決めの形状を裏面に追加しています。
なんでも、成人女性が踏みつけても大丈夫だったそうな。いや、そこまでは想定していませんでしたが、大丈夫だったならよかったです(汗)。30kg以上でも大丈夫だと考えていましたが、強度試験まではできませんでしたから。
④については、選択したファンの性能もあり、10000mmAhクラスのバッテリーで最大12時間ほども持続したそうです。少なくとも、5、6時間は持続しないとダメ、できれば10時間と考えておりましたので、ホッとする数字でした。
実はというほどでもないのですが、我が家のムスメ氏はとてもビッグな赤ちゃん(婉曲表現)でムレもひどく、ベビーカーやクルマのベビーシートも嫌がることが多かったのですが、エアーシートの初期の試験ではとても快適そうにしておりつつした。エアーシートの開発がもう一年早かったら、私ども夫婦のクルマ移動などの大変さも、多少は変わっていたかと思います。
他社さんからも、赤ちゃんのお尻や背中のムレを解消するためのグッズが販売されています。どの商品にも一長一短があると思いますが、こちらのエアーシートには以下のセールスポイントがあります。ぜひご検討ください。親戚などでの赤ちゃん誕生時などのプレゼントにもよいと思います。
①カバー部分が選択できるので清潔。カバー部分だけ購入することも可能!
②ベビーカーの機種にもよりますが、装着したままの折りたたみにも対応。
③水平時での使用も可能。
④固定さえできれば抱っこの時などにも利用可能。
というか、子育て経験者ならわかる、赤ちゃんの熱のこもりっぷりと湿気。それがなんとかなる、というのはなかなか朗報だと思うのです。こういった機器がいろいろ出てくれれば、子育てもちょっとだけどラクになるはず!