― 炭の力でつくる新しい電子素材 ―
竹炭と熱可塑性樹脂を組み合わせた「竹炭導電樹脂」は、私たちのプロジェクトが開発を進めているハンダ不要の電子接合技術を支えるキーハードマテリアルです。
環境に優しい自然素材を使いながら、電気を通し、加熱で形を変えて使える――
そんな“柔らかくて、賢い素材”を目指して設計しました。
🔬 導電樹脂の原理
導電樹脂は、電気を通す粒子(この場合は竹炭の超微粉末)を、絶縁性の樹脂の中に練り込むことでつくられます。通常は炭素粉末や金属粒子が使われますが、私たちは再生可能なバイオマス素材である「竹炭」を採用しています。
竹炭は構造的に導電性を持ち、微粉末化することで電子が移動できるルート(導電パス)を樹脂中に形成します。一定以上の濃度でこのパスが連続すると、樹脂全体が電気を通すようになります。

🧪 材料と形状のバリエーション
私たちの「竹炭導電樹脂」には、用途に応じて3つのタイプを用意しています。
1. 熱可塑性シートタイプ
・薄く延ばして使用する、シート状の導電材
・ヘアドライヤーやアイロン、ハンダごて(低温)等で貼り付け・再加熱が可能
・試作基板のパターン形成や、柔らかい回路の固定に適します
2. パッチタイプ
・切って貼れる、面状の接点固定材
・導電テープの代替として、コンデンサやLEDなど小部品の固定にも対応
・再加熱による再接着が可能で、メンテナンス性にも優れます
3. 粘土タイプ(ペースト状)
・押し出して形を作れる、自由な応用向け素材
・手作業でもディスペンサーでも使える柔軟性
・試作実装や、熱加圧によるスポット固定にも対応
これらはいずれも熱可塑性や柔軟性、流動性を活かし、成形・再成形が可能です。冷めれば固まり、また必要に応じて加熱してやり直すことができます。
※加熱、硬化を繰り返すと劣化していきます。現状数回程度の再利用が可能です。
⚡ 導電性と応用の広がり
現在、竹炭の粉末化と分散性の改良を重ねることで、LEDを点灯する程度の表面抵抗値を安定して得られるようになってきました。用途によってはさらに導電性を高めた配合も可能で、現在は導電性と柔軟性のバランスをとるべく開発中です。
特に以下のような応用が期待されています:
- ハンダを使わない電子部品の接合(ハンダレス実装)
- 圧力センサーやタッチセンサー用の柔軟電極
- 教育向け電子教材や、エコ素材としてのデバイス試作
- 発火リスクを低減した、セーフティな屋内電子工作
🌱 なぜ竹炭なのか?
- 地域資源の活用(放置竹林問題への貢献)
- 二酸化炭素吸収源としてのカーボンポジティブ素材
- 微細構造による高比表面積と導電性の両立
- 焼成から粉砕まで一貫した手作りが可能
竹炭導電樹脂は、里山と技術をつなぐ新たな素材です。電子工作に関わる人々にとって、身近な自然素材が技術の一部になるという発想は、きっと新しい驚きとなるはずです。
🛠️ 今後の展望とクラウドファンディング
この導電樹脂は、現在クラウドファンディングでリターン品のひとつとしてご提供予定です。
応用機器や、超微粉砕竹炭を用いた新配合も計画中です。
「環境と技術の共存」を目指した試みに、ぜひご注目ください。